narai(杉の森酒造)長野県
長野県塩尻市に現存する江戸時代の宿場町、奈良井宿。成立は1532年とも言われ、大変古い歴史を持ちます。そんな歴史に溢れる宿場町で酒造りを営んでいた杉の森酒造。
2012年より休眠状態だったこの蔵が、2021年より名を『suginomori brewery』と改め復活を遂げました。
日本一標高の高い蔵で醸す、透き通る酒
suginomori breweryの最大の特徴は、標高約940mという高さに位置する点。その標高の高さは、数ある蔵元の中でも最も高い標高を持ちます。
標高も高く、緑も豊かなこの地は、美しい天然水に恵まれました。奈良井宿を抱くようにそびえる木曽の山々からこんこんと湧き出る清らかな水を使用した杉の森酒造の酒は、かつて木曽五大名酒と呼ばれる程に高品質、かつ人気の高いものでした。
その仕込み水を引き継いだsuginomori brewery。
信濃川と木曽川の分水嶺付近の湧き水である仕込み水。これこそ、suginomori breweryの繊細な味わいを表現するのに必要不可欠な超軟水でした。
かつてより奈良井宿はその標高の高さ故、米作りに適さない土地。そんな土地に住む人々は、何世紀にも渡り長野県内の名勝地としても有名な安曇野平野の農家より米を購入していたそう。そうして買い取った米は、酒へと姿を変え、農家の人々や奈良井宿の人々、訪れた旅人の癒しとなり、地域経済の発展につながる。そういった循環が存在していました。
suginomori breweryはその伝統を引き継ぎ、名峰・槍ヶ岳や飛騨山脈を望む美しい土地、安曇野の松川村で酒米造りを営むファームいちまるにて契約栽培された最高品質の酒造好適米を使用しています。それはもちろん、最高の米で仕込む、また、県内の米で仕込むというこだわりもありますが、古くからの奈良井宿の姿を崩すことなく受け継ぎたい。そういった意味合いも込められています。
そうして生まれるsuginomori breweryの酒は、透明感と清らかさに溢れ、万人に親しみやすい味わいをしています。
『見せる酒蔵』としての役割とマイクロブルワリー
2021年の再開時には、suginomori breweryは様々な施設を併設し、蔵の様子を眺めながら食事を楽しんだり、宿泊をすることができるようになりました。それは、奈良井宿という美しく歴史に満ちた町に足を運んでもらい、地域観光の活性に繋がれば、という想いから。銘柄名『narai』も、地域の名を付ける事で、お酒をきっかけに地域を知り、そこから興味が広がれば、という願いのあらわれです。
また、suginomori breweryは総面積250平方メートルと大変小さな蔵です。山間部、そして伝統的な建築物の多く残る宿場町という影響もあり、拡張も困難。そんな蔵の限られたスペースを巧みに用い、様々な工夫を凝らして自分たちの表現したい酒や奈良井宿の魅力を醸します。
奈良井宿に伝わる歴史、伝統を守りながら、次世代の復活蔵として未来を切り開く。
suginomori breweryは、新たな日本酒の形なのかもしれません。
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