みむろ杉 (今西酒造)奈良県
1660年の万治3年に今西酒造は創業されました。現在は三輪そうめんで有名な奈良県桜井市大字三輪に蔵を構えています。主な銘柄はみむろ杉です。口に含んでみるとお米本来の味が広がり、のどを通るとキレの良い優しい酸のによって味が収れんされていく。そんな料理を食べるほどに杯がより進むお酒を目指しています。
三輪を飲む
【今西酒造株式会社】
日本では古くから春には桜に酒の「花見酒」、暑い夏には景気払いとしての「夏越しのお酒」、秋には綺麗な満月の月明かりの下での「月見酒」…といった四季折々で自然を感じながらお酒を楽しむ文化が育まれてきました。そんな日本の文化を象徴する日本酒は今西酒造が蔵を構える「大和三輪」で始まったといわれています。
【酒造り発祥の地 三輪】
その理由として三輪山を御神体とする「大神神社」は酒造りの神様とも知られており、また活日神社(いくひじんじゃ)では、日本で唯一酒造りにおける杜氏の祖とよばれる高橋活日命(たかはしのいくひのみこと)を祀っています。そして三輪山は古くから「三諸山(みむろやま)」と呼ばれており、「うま酒みむろの山」と称されています。「みむろ…実醪」すなわち『酒のもと』の意味であり、お酒の神様としての信仰からの呼び名であると言われています。三輪山で”杉”に神様が宿るとのことから約350年もの間、今西酒造では「三諸杉」という商標で酒造りを行っています。
【酒造りの神様が宿る大神神社(おおみかわじんじゃ)】
大神神社の御祭神である大物主大神(おおものぬしのおおかみ)を厚く敬った崇神天皇は神様に捧げる御酒を造るために、高橋活日命(たかはしのいくひのみこと)を掌酒(さかひと)に任命しました。そして活日は一夜にして美酒を醸したと伝えられています。崇神天皇8年の冬12月の卯の日に大神への祭りが行われた後の酒宴で活日は御酒を天皇に捧げて一首詠みました。
「この神酒は 我が神酒ならず 倭なす 大物主の 醸みし神酒 幾久 幾久」
(この神酒はわたしが造った神酒ではありません。倭の国をお造りになった大物主大神が醸されたお酒です。幾世までも久しく栄えませ、栄えませ。)
崇神天皇と群臣たちは夜な夜な酒を酌み交わして、祭りの宴を楽しみました。この故実によりご祭は酒造りの神様として敬われるようになったとされ、三輪の地は美味い酒を産み出す酒どころとして人によく知れわたりました。そのため毎年11月14日には大神神社に全国中から蔵元・杜氏が集まり「醸造祈願祭(酒まつり)」が行われます。境内では振舞酒も行われ、多くの参拝客・観光客でにぎわいます。
この大神神社で有名なものが酒蔵の軒先に吊るされている「杉玉」です。杉玉は大神神社から全国の酒蔵に届けられていて、その証に杉玉の下に吊るされている札を見てみると、どこの酒蔵でも「三輪明神・しるしの杉玉」と記されています。
ちなみに杉玉は”新酒ができあがりました”という酒蔵からの合図でもあり、新酒ができあがったころは青々とした杉玉が吊るされ、一年をかけてゆっくりと茶色になっていきます。色の変化がお酒の熟成具合ともいわれています。昼夜の寒暖の差が激しい三輪の気候、三輪山の伏流水、米は三輪産、と「三輪」にこだわっていて、そして奥深い歴史がそろう三輪は酒造りにとって最良の地ともいえます。そんな三輪山の麓で地元のお米・水・技術にこだわりながら、昔ながらの手造りを守っていて、全国新酒鑑表評会でも賞を多数受賞し、酒質にも定評を頂いておられます。
【米作りと水】
うまい酒には必ず理由がある。その一つに、やはり「米」、そして、その米が育つ土壌。最後に「水」です。いい土壌には、うまい米が育ち、その米で醸す酒も自然とうまくなる。そして御神体である三輪山の伏流水のみを使用してお酒を醸しています。特にこの伏流水は酒造りと商売の神様が宿るとされる神の水とされていて、三輪の地域では神聖な水です。そのような想いから、今西酒造では三輪山の裏手(社内呼称:裏三輪)にある今もなお自然が原型を残している最高の環境で契約農家の方と共に自ら米作りを行っています。最近特に力をいれている米が奈良県唯一の酒造好適米「露葉風(つゆはかぜ)」。デリケートな米故、生産量はごくわずかですが、独特の風味・清酒本来の美しさがでやすい品種です。また仕込み水と同じ水脈上の水を使って露葉風や山田錦を栽培しているので、水に対するこだわりはどこの酒蔵よりも強いのではないかと感じます。
酒をつくる
2021.04.04