酒を知る今、世界で高く評価される「平和酒造」の極上のこだわり、無量山3品種を楽しむ

紀州の風土を醸す~和歌山/平和酒造

平和酒造

和歌山は、美しいビーチや日帰りできる釣り場もあり、関西で海が満喫できるマリンリゾートのイメージがあります。イサキやタチウオなど様々な魚が採れることに加え、ウツボやゲンゲ等の珍魚、またクジラやマグロ、川魚など多様な水産食材を楽しむことができます。他にも、有田ミカン、湯浅醤油、南高梅、金山寺味噌、紀州鶏、備長炭、漆器等多くの特産品に恵まれた自然と文化にあふれる土地柄です。

2004年に世界遺産に登録された熊野古道。その参詣道の目的地である熊野三山は日本書紀にも記される古代からの自然崇拝の地で、中世より、天皇を始めあらゆる階層の多くの人々が信仰のために往来しました。人が往来する時を重ねることで、和歌山には日本の伝統文化が育まれてきました。縄文後期に稲作が行われていた遺跡もあり、悠久の歴史に根差した風土がここにあるのです。

平和酒造

和歌山県海南市/平和酒造は、昭和27年に創業した酒蔵です。メインブランドの紀土は「紀州の風土」の意で、先に述べたような紀州の土地柄を醸した酒です。「酒は生きもの、人はかけ橋」という酒蔵メッセージを掲げ、田植えや稲刈りなど体験型のイベントを主催するなど、人と自然とのつながりを体感できるロハスな活動の場を消費者に提供されています。

高度経済成長期に失われた人が本来持っているものを取り戻す、そういった考えに基づいて商品化されたブランドが「紀土」なのです。蔵人が夏に稲作を行うことでたどり着く価値観。そういった価値観に基づいたスローな酒蔵として、ものづくりの本来あるべき姿への回帰を目指しているのです。KID、すなわち若者が、従来の価値観にとらわれない新しい感性で新たな味わいを生みだしていく、そういうメッセージもこのブランドには含まれていると感じます。

世界的品評会IWCで多くの賞を席捲

平和酒造

平和酒造は、丁寧に作ったフレッシュな味わいの純米吟醸酒のイメージがありますが、純米大吟醸のスパークリング等新しい感性を取入れた酒を生み出し、今最も注目されている人気蔵のひとつです。その魅力は国内のみにとどまらず、「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」という世界的なワイン品評会でも多くの賞を席捲しています。

IWCとは、1984年より毎年ロンドンで開催され、30年以上の歴史を経て、世界で最も洗練された品評会として知られています。2007年よりサケ部門の品評会も始まり、300名もの審査員がブラインドでティスティングをする厳正な審査で、今や世界最大の日本酒コンクールとなっています。

平和酒造はこの品評会のサケ部門において出品酒のほとんどが高評価を受け、世界一の酒蔵とされる「サケ・ブルワリー・オブ・ザ・イヤー」の栄誉に2019年、2020年と二年連続で輝き、海外からも熱く注目されています。

また、中でも「無量山純米吟醸」は2020年の純米吟醸部門で金賞を受賞し、部門トップのトロフィー賞に選ばれました。さらに全9部門のトロフィー賞の中から選ばれる「チャンピオン酒」の栄冠をも手にし、約1400の選りすぐられた出品酒の中の頂点を極めるという快挙を成し遂げたのです。他にも、純米大吟醸部門では「紀土 純米大吟醸 精米歩合四十」がトロフィー賞を獲得、合わせて5銘柄が金賞銀賞を受賞するなど、称賛に値する成績を収めています。

今回は、その「チャンピオン酒」も含め全て受賞銘柄である平和酒造の最高級ブランド無量山の純米、純米吟醸、純米大吟醸の三品種の飲み比べをご紹介致します。

ラベルを考察する

平和酒造

平和酒造はそもそも仏寺が創業した酒蔵です。「無量山」というシリーズ名は当時の山号寺号である「無量山超願寺」から名付けられており、いわば紀土のレガシーシリーズと言えます。ラベルは総じて仏寺の荘厳な印象を受け、詫び寂びを感じます。色合いは左から右へ徐々に色調が濃くなるグラデーションになっており、荘厳さをより深く感じさせます。

純米のラベルは、黒みを帯びた朱色の漆で塗ったような色が右に行くにつれて金赤や黄櫨染のような高貴な色合いに進み、深い緋色から柿渋や栗色、弁柄色のような重い色に変わっていきます。純米吟醸のラベルは、紫がかった静寂な印象の群青色が瑠璃、紺と進み、藍、濃藍と深みを帯びていきます。純米大吟醸のラベルは、豊穣な印象の明るい黄金色から山吹色と穣りを感じさせ、気高さを残しながら徐々に深みを増し、朽葉色、焦茶と寂びれていきます。

中央に映える無量山のロゴはまるで銀紛で描かれた蒔絵のようで、その背景に紀土のロゴがさりげなくデザインされ、ブランドに気品を持たせています。ラベルカラーのグラデーションは俗世から浄土へと移りゆく輪廻、言い換えれば、人間の日常生活と自然崇拝の霊場との架け橋のようで、まさに紀州の風土に根ざす仏の教えを表しているのかと頷けます。

ティスティング、合う料理について

平和酒造

酒の色は、いずれも輝きのあるプラチナに淡い黄緑をおびています。純米大吟醸が幾分か濃い目の色調で、ゴールドを帯びたプラチナといった印象です。3種とも見た目だけで上質な濃厚さを感じます。グラスを傾けるとトロリとした質感があり、やはりエキスが濃いことがわかります。酒米はいずれも兵庫県特A地区の山田錦を使用。最高級の酒米を丁寧にじっくりと醸した酒だからこそ、見た目にも気品があります。

【 紀土 無量山 純米 】

紀土 無量山 純米

香りは、桃やライチのような柔らかい果実の香りと米からくる白玉団子のような甘やかな香りが心地よく、ナチュラルな印象を持ちます。口当たりは柔らかく、優しい旨味とさわやかな酸を感じます。口の中で酸と甘味がまったりと調和しキレていく感じで、食中酒として楽しめるでしょう。

「マグロの中トロ、タイなどの刺身」、「タチウオや伊勢エビの塩焼き」などは当然合いますが、カブなど試してみてはいかがでしょうか。「ホイル焼き」は海塩や藻塩など旨味の濃い塩で、また、「すりながし仕立て」は黒江の漆器に入れたらさらに味わいも際立つでしょう。「アスバラのバターソテー」なども良い。「だし巻き卵」は醤油をかけず、あっさりと。「ウツボ、ゲンゲの唐揚げ」、「白身魚のフリット」も塩とミカン汁であっさりといただきたい。さっぱりとした味付けの「紀州鶏の和風唐揚げ」も是非試してみたいです。

紀土 無量山 純米 とご一緒にどうぞ。

【 紀土 無量山 純米吟醸 】

紀土 無量山 純米吟醸

メロンのような上品でフルーティな香りが心地よく広がります。口に含むとジューシーな甘さと穏やかな酸が心地よく、後から来るほろ苦さが相まって口に広がります。絶妙な酸がその甘さとほろ苦さをバランスよくまとめあげ、ほどよい苦味が残る心地よい余韻が楽しめます。喉ごし良く、飲み飽きない味わいで、いくらでも飲めそうです。

どちらかというと濃い味付けの料理や珍味と合わせたい。「クジラのオバケ酢味噌」や「クジラの赤身肉のタタキ」などもお薦めです。タタキは表面に湯浅醤油を刷毛でサッとひと塗りするぐらいが良いと思います。また、「黒鯛の焼き霜造り」は皮を炙ると皮の油の旨味が引き立つので一般的にはポンズで頂きたいところですが、この酒には湯浅醤油で味わっていただきたい。醤油とミカンの甘味は相性が良いので、大根おろしに有田ミカンの汁を絞ったものと一緒に召し上がって下さい。洋食の「白身魚のソテー、うすいまめのクリームソース」は、イサキやメバル等、和歌山でとれた魚で味わいたい。贅沢に「伊勢エビのグリル、アメリケーヌソース」、「ふかひれの姿煮」も試してみたい。「アワビの姿蒸し」は、殻にワカメ等海藻を敷き、アワビの旨味を深めます。これもぜひ湯浅醤油で味わっていただきたい。

紀土 無量山 純米吟醸 とご一緒にどうぞ。

【 紀土 無量山 純米大吟醸 】

紀土 無量山 純米大吟醸

さすがに特A地区の山田錦の純米大吟醸らしく、明らかに濃く、濃醇な印象です。香りは熟れたパイナップルやバナナ、黄色いリンゴのコンポートのような果実香が広がり、キンモクセイのような甘い花の香も感じます。口に含むと上品な甘みが酸味とともに広がります。濃醇な果実のような米の旨味は酸や苦味にも勝り、それらを包み込み、引き込まれるように喉奥に流れ込んでいき、味わい深い至福の余韻に浸ります。

味がしっかりしているので肉料理にも合わせることができます。また、酸の優しい出汁味の酢物等もよく合うと思います。「紀州鶏もも肉の備長炭炙り焼き」等は紀州の風土を満喫できるでしょう。さらに、炙ったもも肉をこの米大吟醸にひと潜りさせ、もう一度炙るとよりジューシーに頂けると思います。和歌山の特産品で甘味が強い「アイコトマト」は加熱すると旨味がしっかり出る出汁トマトです。このトマトを使い、ハマグリ、白身魚、エビなどをたっぷり入れた「アイコトマトのブイヤベース」など、魚介スープもよく合うと思います。

紀土 無量山 純米大吟醸 とご一緒にどうぞ。