酒を楽しむみむろ杉 純米大吟醸に迫る。

今西酒造には、代々造り続けている漢字で書く「三諸杉」とひらがなで書く「ろまんシリーズ みむろ杉」の 2 ブランドがあります。十四代蔵主今西将之さんが立ち上げた「ろまんシリーズ」は既に石高の 9 割を占め、そのピュアな味わいは鑑評会で多くの賞に輝き、海外でも高く評価されています。今回はその中から純米大吟醸の「山田錦」と「露葉風」をご紹介いたします。

三輪山の神とともにあること

みむろ杉 純米大吟醸に迫る

日本酒発祥の地、奈良。最古の神社である大神神社は建国の神、酒造の神として古くから祭られています。毎年、新酒造りが始まる時期である 11 月 14 日、醸造安全祈願祭が執り行われ、「しるしの杉玉」が全国の酒蔵に送られます。各地の酒蔵の軒につるされているこの杉玉は新酒ができたことを示すと言われますが、実は大神神社のご神体である三輪山の杉で造られた神の営気に満ちたものなのです。

そんな酒の神が宿る三輪山の下で 360 年にわたり酒を醸し続けている唯一の蔵が今西酒造です。「三輪に降る清き雨 めぐりて湧き出す、三輪の酒」とラベルに記載された言葉通り、三輪山の水と三輪で生産された米を用いて、酒造の歴史や文化が息づく三輪の地にこだわって酒を造っています。

三輪山の水

みむろ杉 純米大吟醸に迫る

水は軟水で「膨らんで、消える」。そこに米のエキスを乗せるイメージで味を築いていくのがみむろ杉の酒造りです。米の味を綺麗に引き出すために、ひと手間ふた手間かけて丁寧に仕込む。その為に、全国の酒蔵を巡り、知り得たベストな設備を大胆に導入しています。洗米は小分け、蒸米は手運び。麹も工程毎に分けて造るなど、味があってピュアな酒を醸すためには妥協せず労を惜しまない。一点の曇りもない、正しい判断に基づいた手法で厳かに取り組む姿。飲み手を裏切らない三輪のうま酒を造り続ける姿がそこにあります。

純米大吟醸「山田錦」「露葉風」

みむろ杉 純米大吟醸に迫る

みむろ杉のラベルはスタイリッシュでありながら荘厳さも併せ持つ印象。ブランドロゴは細い文字で書かれているにも関わらず、グッと凝縮した質感があり、神宿る三輪山の杉を背景に凛とした重みを感じさせます。

左から山田錦と露葉風です。山田錦の金色の文字は如何にも純米大吟醸の威風。露葉風の文字は緑色で、青々とした「しるしの杉玉」を彷彿とさせます。奈良だけで栽培されるこの米の 1/3 以上を今西酒造が醸しており、露葉風のことを最も熟知した蔵のひとつといえます。

お酒の特徴

みむろ杉 純米大吟醸に迫る

利き猪口で色味を比べたものが上の写真です。真ん中は比較用のカラ容器。山田錦の方が若干色味が濃く感じます。ワイン用ティスティンググラスで見るとプラチナのようなきらめきがあり、三輪山に降った雨がこのように姿を変えたのかと、しばし思いを馳せ、魅せられてしまいます。穏やかな香りですので10℃前後でじっくりとピュアな米の旨味を楽しむのがお薦めです。

◆純米大吟醸「山田錦」
淡いイエロープラチナの色合いは、気品があり、9 号酵母によるナチュラルな香りは黄色いリンゴやなしの果実と純米酒らしい白玉粉の優しい香りがゆるやかに共鳴する印象です。なめらかな口当たりで芳醇な味わい。スッキリとした酸が味わいをまとめていきます。膨らんで消える、まさにみむろ杉らしい味わいが楽しめるお酒です。

◆純米大吟醸「露葉風」
ほのかにイエローがかったプラチナ。ティスティンググラスで見ると粘性が高くディスクの厚みを感じます。香りは熟れた果実、いちじくやあんずのジャム、かぼちゃやトマト等甘味のある野菜やナッツのような香ばしい香りも感じます。味わいはコクがあり、しっかりした酸もあり、緩やかな複雑味を感じさせます。余韻に感じる柔らかな苦味も心地良い。

合わせて飲みたい料理

みむろ杉 純米大吟醸に迫る

いずれも香りが穏やかで、味わいも洗練されており、食中酒として幅広く楽しめます。

◆純米大吟醸「山田錦」は、まずは地元の三輪そうめんと試したい。鰹風味のきいた出汁に浸け一気にのど越しで味わい、ゆるりと酒を嗜めば、三輪山の営気が体にしみわたるはずです。旨味に寄り添えるような優しい味わいで、柿の葉寿司、アユやアマゴの塩焼きも合う。洗練された味わいはフレンチなどにも合わせたい。軽いソースの魚料理、セビーチェ、パクチーの利いた鶏肉のフォーなども面白い。

◆純米大吟醸「露葉風」は、煮物や特に醤油味の料理に合いますよ、とのこと。わらびの佃煮、串こんにゃく、あゆ甘露煮、大和肉鶏のすき焼きなど、是非奈良の食に合わせてみたい。わらび餅も合うと思います。また、鮮魚のカルパッチョ、マルガリータやジェノベーゼ、ガスパッチョなどイタリアンやスペイン料理にも合うでしょう。さらに、洗練された味わいはふかひれの姿煮など、高級中華とも合わせてみたい。あくまでも個人的見解ですので、ご参考いただければ幸いです。

三輪の酒がめざすもの

三輪のテロワールには原料の水と米だけでなく、文化や歴史も含まれます。それを酒で表現することはとても難しい。今西酒造は今年、自社圃場での酒造米栽培を開始しました。さらに、杉で造った木桶を導入し、木桶での菩提酛造りに取り組むという事です。神宿る三輪のテロワール。その歴史、文化、営気を酒で表現する。更なる高みを目指す「みむろ杉」に益々注目していきたいです。

今西酒造の記事はこちら